5月 社内勉強会               日常の中にある「ねがい」を叶える

弊社では、月1回社内研修会を行っています。

スタッフが集まれるのがどうしても仕事後になってしまうため、

残業代支給&お弁当支給&子連れOKでみんなが参加しやすいようにしています。

子供たちはみんなでお弁当食べて、遊んで、研修が終わる頃には汗びっしょりです。笑

昨年度は、ストレングスファインダーやマネジメント研修を行いました。

今年度はどうしようと研修担当のスタッフと相談し、今年はスタッフ1人ずつテーマを決めて

プレゼンテーション&ディスカッションをしてもらうことにしました。

5月は、TOMOROくんによる、症例検討会。

プレゼン資料を作ったのも、プレゼンテーションも初めてだったようで、とても緊張していましたが、それだけでいい経験になります。

ある末期がんの男性のケアについて、TOMOROくんの中に生じた倫理的葛藤を言語化し、みんなでディスカッションしました。

医療倫理の4原則には、自律尊重、無危害、善行、正義の4つがありますが、

今回のケースでは、ナースの中に「自律尊重と無危害」との間で葛藤が生じていました。

本人のお風呂に入りたいという希望に対して、お風呂で意識消失したらどうしよう、呼吸が止まったらどうしよう、転倒したらどうしよう。

本人が胃ろうから栄養剤を注入したいという希望に対して、栄養剤を入れることで腹部膨満や嘔吐などの苦痛の増強につながるのではないか。

いつもなら私に電話で相談してくるTOMOROくんが、その日は自分で「彼の希望を叶えること」を選択して実践しました。いうまでもなく、安全性に配慮して、薬物療法やポジショニングによる苦痛の緩和も行いながら。

翌日、彼はご家族に見守られながら最期を迎えました。

結果的には、それが彼にとって人生最期のお風呂になりました。

「お風呂に入りたい」「栄養剤を入れてほしい」その思いの背景には、なにがあったのか。

私自身は、彼と関わらせていただいて、最期まで治療を続けたいという「回復への希望」を持たれていたように思います。そして、お風呂に入ることも栄養剤を入れることも彼にとってはそれが「日常のルーティン」であり、自分でできないから看護師に委ねている、そういう風に感じていたのではないかと推察していました。

そして、TOMOROくんの中に生じた葛藤の中には、看護判断することへの自信のなさや責任感やプレッシャー、「こうあらねばならない、こうあるべきだ」という自分自身の価値観に触れた中で葛藤が生じたものもあるように思いました。そういう看護師の迷いや葛藤を素直に言語化できることや、他のスタッフからの助言やアドバイスを真摯に聞いて今後の実践に生かしていこうとする姿勢も、TOMOROくんの素晴らしいところだと思います。

何をするにも「リスク」はありますが、安全性に配慮しながら、苦痛を緩和し、体力の消耗を最小限にする方法を考えながら、その方の希望を叶える。

個別性を尊重し、尊厳やプライバシーに配慮し、安全・安楽・自律的な看護を実践するためにはどうすればよいのか。考えて、組み立てて、実践する。その繰り返しが、自らの看護を磨き続けていくことにつながるのではないかと思います。

お風呂に入った後に、栄養剤を入れた後に、彼が言ってくださった心からの「ありがとう」を何よりも大切に受けとめたいと思います。

答えのない問いに向き合いながら、「今、この瞬間」に真摯に関わることは、容易なことではないと思います。ひとりでは不安で怖くても、私たちはひとりではなく、チームで看護実践をしていること、助けてくれる仲間がいることをちゃんと実感しながら、目の前の人にとっての「最善」について考え続けられるひとりひとりでありたいと思います。

自分自身にできないことが増えていく、全人的な苦痛が生じている、死が迫っている、そのような状況にある方々の、〇〇したいという「ねがい」を共に叶えること、それがどれだけ大切なことか、尊いことか、そういうことを大切にできるチームでありたいと思います。そしてその「ねがい」は、「お風呂に入りたい」「お寿司を食べたい」「外の空気が吸いたい」など、健康なときは当たり前だった日常の中にある「ねがい」が多く、療養上の世話に携わる看護師・セラピストだからこそできることもたくさんあるように思います。

私たち看護師やセラピストを成長させてくださる、多くの学びをくださる利用者さん・ご家族との出会いに心から感謝しながら、一歩一歩前進していきたいと思います。

TOMOROくんの学びがチーム全体にもとてもよい学びの時間となりました。これからのTOMOROくんとTEAMの成長を楽しみに、ひとつひとつていねいに積み重ねていきましょう。